はじめに
勤め先の社命によりTOEIC600点取得をしなくてはならず、45歳になる自分には新しいことを覚えることが難しい年齢でした。300点台からなかなか上達しませんでしたが、試行錯誤し、10カ月で600点に到達する実践方法がわかりました。思いのほか効果がありましたのでその方法をお伝えしたいと思います。
基本的に使用する書籍はたったの4冊です。これでリーディングパートとリスニングパートをカバーします。勉強方法として、頭でスラッシュリーディングしながら音読することをメインのトレーニングとしています。よって、単語の書き取り練習はしませんし、ディクテーション(音を聞いて書き取る)もしません。このトレーニング方法はリスニングパートにも応用します。また、英文を後ろから訳してしまう癖があるかた向けにその克服方法として補助書籍を使ったスラッシュリーディングのトレーニング方法にも触れます。
前提条件
- 英会話が目的ではなく、勤め先の会社でTOEIC600点を求められている方(点数が取れればよいと割り切れる方)。
- 現時点でTOEIC300点台の方(またはそれ以上の方)。
- 目標達成を10カ月から1年で考えている方(想定する勉強時間は600時間)。
45歳が600点をとるための戦略
年齢的に知識の吸収がしにくいという前提に立って、以下の方針で進めます。
- 英語を言語として習得するのではなく、知識として身に着けます。
- 繰り返し音読するなどして、頭に刷り込んでいく(覚えるというよりは、条件反射で英語の処理ができるようにする)。
- 勉強期間は10カ月間を想定(6カ月では無理でした)。
- 楽しておぼえる裏ワザはない(3カ月で800~900点などの高得点を取った方は元々英語ができる方であり、単にブランクがあっただけ)。
参考書と問題集
色々なブログを参考にさせていただき、分析した結果、これらにたどり着きました。
後ろから翻訳してしまう方へのリハビリ(補助書籍として使用) |
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英文法のおさらい |
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英文法の急所の確認 |
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TOEIC特有の単語を覚える |
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長文読解とリスニングをメインとした公式問題集の活用 |
ステップ0 後ろから翻訳してしまう方へのリハビリ
(英語を前から翻訳できる方、スラッシュリーディングができる方はこのセクションの実施は不要ですので、先に進んでください)
TOEICの試験を受けるとわかりますが、あっという間に試験時間が終了します。
受験して気が付いたことは、リーディングの試験で後ろから英語を翻訳していると、翻訳に時間がかかり、文法問題をやっているだけで試験時間が終了してしまい、頑張っても500点前後からのスコアアップができないことです。開始当初から飛躍的に点数が取れるようになったもののこれが壁となり相当苦しみました。
英語を前から翻訳できるようになって文法問題に時間をかけず、長文読解の問題の半分ぐらいに着手できるようになる必要があります。
リハビリにはスラッシュリーディングという、文節に区切って先頭から翻訳する方式を習得します。
その参考書として、ALL IN ONE Basic (Ver.2)を使用します。英語を言語として習得するための優れた参考書なのですが、あえて今回はこの書籍にある音声のみを使用します。
使用するのは「聞き流し用の音声」です。ALL IN ONE Basic (Ver.2)では、スマートフォンのアプリが提供されておりますので、それをダウンロードして「聞き流し用の音声」を入手してください。なお、電車通勤中や自宅で勉強する方はアプリでよいと思いますが、自家用車で通勤中に勉強をする場合は、それでは困ると思います。ちなみに、初版にはmp3の音声ファイルがDVD-ROMで付属しております。当方は、自家用車通勤なので初版に付属のDVD-ROMを使用しました。
さて、例文1つの音声は、文節ごとに日本語の発声、英語の発声を行い、最後に、日本語と英語で全体の発声が行われます。
これを以下の要領で実践してください。
- 日本語の文節の発声を聞きながら、心の中でオーバーラッピングする。
- 英語の文節の発声を聞きながら、声に出してオーバーラッピングする。
- 日本語の全体の発声を聞きながら、心の中でオーバーラッピングする。
- 英文全体の発声を聞きながら、声に出してオーバーラッピングする。
テキストは見ても見なくてもどちらでも構いません(当方は自家用車の通勤中に勉強したのでテキストは見ませんでした)。ただし、聞き流し用の音声は、聞き流すのではなく、必死に聞いて音読することに注意してください。電車の中などで声に出すことが難しい場合は、心の中で音読してください。このステップで文法を覚える必要はありません。これを繰り返すことで、徐々にスラッシュリーディングが刷り込まれていきます。
1回の勉強で、例文001-1から052-3前後までの1時間45分間を実施するようにし、毎日同じ例文を繰り返して、体に刷り込ませてください。1回に1時間45分の時間が確保できないときは、2日に分割しても構いません。3日以上に分割すると1日目のを忘れかけてしまい、体に刷り込まれませんでした。
1カ月程度、ひたすらこれだけを繰り返してやってください。同じところを毎日繰り返すことに意義があります。1か月後には、暗記して日本語が再生されると反射的に英語が出てきます。文法がわからなくても、反射的に英語が出てくるレベルになったら、感覚的にスラッシュリーディングができるようになっていますので、これで速く読む基礎力が備わりました。なお、052-3以降にもたくさんの例文がありますが、それら例文を実施すると一周するのに数日かかるペースとなってしまい、同じ例文を体に刷り込む効率が落ちるので実施の必要は有りません。
ステップ1 TOEIC特有の単語を覚える
英文法の勉強を効率化するために、最初に英単語の語彙力をアップさせます。理由は明確で、語彙力のない状態で文法書を読み進めると、不明な単語のオンパレードで調べるのに時間がかかり非効率だからです。その参考書として、TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズを使用します。本書は、TOEICに頻出のフレーズを丸ごと覚えられるという特徴があります。600点を取るだけなら最初の600点レベルのパートだけやればよいという方がいらっしゃいますが、試験でわからない単語が出てきたときにそこで固まってしまって時間をロスしてしまったり、前後の単語を確認して答えを推測しようとして大幅に時間をロスしてしまいます。しかも、難解な単語はいたるところで出現されるので文法問題だけ高得点を狙おうにも簡単ではありません。なので、本書は990点のパートも含めてすべてが勉強の対象となります。
本書の使い方は他の方のホームページにも記載がある通り、筋トレのようにひたすら実施して、体に刷り込んでいくというやり方で進めます。やり終えることろには、暗記してしまい、日本語が再生されると英語が反射的に出てくるようになります。具体的な実施方法は次の通りです。
- テキストの英文を付属の赤の下敷きで隠して、日本語の音声を聞く。隠れた赤字単語を当てる。
- 英語の音声を聞く。当たりのときは、フレーズを1回音読する。外れたときやパッと答えが出てこないときは3回繰り返す。慣れてきたら、英語の音声に合わせてフレーズのオーバーラッピングもする。
- 1日で1冊を終わらせる。最初は日本語を聞いてパッと英語のフレーズが出てこないので3回音読を繰り返した結果4~6時間かかるので、最初の1~2ループ目は4日に分割します。パッと出てくるようになると1~2時間で1冊音読できるようになります。
- つらいですが、これを1.5カ月毎日欠かさず実施してください。最初の1カ月はやっている割に身につかない感覚でしたが、1カ月を超えると急に体に刷り込まれる感覚でした。
終わるころには、暗記してしまい、日本語が再生されると英語のフレーズが反射的に出てくるようになります。また、フレーズを聞いて発音することでリスニング力も備わっていきます。
DUO3.0は効率的なのか?
語彙を増やすための書籍として有名なDUO3.0ですが、当方が実践した結果、英語を言語として覚えるのに大変効率的である一方、TOEIC特有の単語には弱いという結果です。頑張ってやり抜いても、TOEIC向けとしては非効率で役に立たなかったという印象です。今回の勉強方法には不向きでした。
ステップ2 英文法のおさらい
英語を言語として学びたい場合は、前述のALL IN ONE Basic (Ver.2)を使って学習することをお勧めしますが、TOEIC向けの文法を効率よく勉強するためにはTOEICに特化した文法書を使用するのが近道となります。その参考書として、いきなりスコアアップ! TOEIC(R) テスト600点英文法集中講義を使用します。本書は文法を系統だって丁寧に解説しています。各文法を見開き2ページにわかりやすくコンパクトにまとめています。
それでは本書の使い方を説明します。
- 文法の解説を読んで勉強します。
- 練習問題を解いてください。
- 答があっているか確認し、解説を読みます。はずれの選択もしっかり確認し、なぜはずれなのか確認してください。
- 設問と選択肢の英文中の単語に意味がわからないものがあれば、辞書で確認します。
- 構文分析を見て構文がどのようになっているか確認します。構文をわかったつもりにならず、完全に理解してください。そうしないと文法問題のひっかけで撃沈するのと、長文読解で文意を読み取れなくなります。理解できない場合は、数研出版の基礎からの新々総合英語で調べることをお勧めします。これで調べて完璧に習得してください(Forestや一億人の英文法よりわかりやすい)。
- 設問と選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。なお、本書には音声が付属されていないので、発音が不明な単語は構文を確認するときに発音も確認してください。
- 1日あたり2つのセクションを実施してください。よって、1日目と2日目とかいてあるセクションは1日で2日分を実施してください。
- 11日間で1ターンし、これを3ターン実施してください。
精読の勧め
精読とは、単語の意味や構文などを正確に理解して読み進めることを意味します。精読せずに音読すると、意味が分からないものをただ声に出して読んでいることと同じで、効果が全くありません。精読して単語の意味や構文を把握した状態で音読すると正確かつ、速く読むことができるようになってきます。精読した英文をスラッシュリーディング的に日本語を思い浮かべながら音読するというのは、英語で発音しながら日本語に同時通訳している状態といえます。
効率的に速く読めるようになりますので、是非実践してください。
ステップ3 英文法の急所の確認
いきなりスコアアップ! TOEIC(R) テスト600点英文法集中講義で触れられなかったTOEIC特有の難題文法を習得していきます。その参考書として、1駅1題 新TOEIC TEST文法特急を使用します。
- 問題を解きます。
- 答えがあっているか確認し、解説を読んで勉強します。
- 意味や発音がわからない単語があれば、辞書で確認します。
- 設問と選択肢の構文を解析します。必ず構文がわかるまで粘り強く調べます。
- 設問と選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。なお、音声は特急シリーズのホームページからダウンロードできますのでこれを使用して、発音の確認をお勧めします。
- 5日間で一冊を終わらせるペースで進めてください。
- これを3ターン実施してください。
ステップ4 長文読解とリスニングをメインとした公式問題集の活用
長文読解
長文読解に取り掛かるとします。その参考書として、TOEICテスト公式問題集を使用します。理由は、公式問題集が本番の試験により近い出題のためです。新形式問題対応の公式問題集は数種類あり、どれを選択してもよいです。ここでは、 新形式問題対応編を使用します。
- まず、本書内に2セットある模試のうちから1つを選択し、その中にあるPart7を制限時間を無視して解いてみます。
- 答え合わせを実施し、解説を読んで勉強します。
- 長文の英文を精読します。単語の意味、構文、発音を確認します。
- 長文の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 設問と選択肢も同様に、精読と音読を実施してください。
- 3~4日で1セット分のPart7を実施してください。
- 次に、1セット分のPart6を上記に沿って1~2日で実施してください。
- 実施しなかった方の模試セットに含まれるPart7とPart6も上記の要領で指定の日数で実施してください。
- これを3ループ実施してください。
何度も繰り返し実施すると答えを覚えてしまいますが、その状態で実施した方が頭に定着しやすいです。金のフレーズを使った特訓、精読とスラッシュリーディングの成果が出てきて、終盤ではそれなりのスピードで音読ができ、文意も把握出来るようになったと思います。
文法
次に、文法を解いてみましょう。
- まず、本書内に2セットある模試のうちから1つを選択し、その中にあるPart5を制限時間を無視して解いてみます。
- 答え合わせを実施し、解説を読んで勉強します。
- 設問と選択肢の英文を精読します。単語の意味、構文、発音を確認します。
- 設問と選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 1日で1セット分のPart5を実施してください。
- 翌日、実施しなかった方の模試セットに含まれるPart5も上記の要領で指定の日数で実施してください。
- これを3ループ実施してください。
文法を解いてみてどうでしたでしょうか?長文読解を先に実施することで、設問やその選択肢を速く読むことができるようになっていることと思います。
リーディングの模試
次に、リーディングの模試をしてみましょう。制限時間を守って実施してください。ここまで来ると答えを暗記した状態になりますが問題ありません。わかる英文を解くことで定着率が高まります。
- まず、本書内に2セットある模試のうちから1つを選択します。
- 時間を意識して、各パートの時間配分を決めます。例を下の方に記載します。
- 実際の試験時間のとおりに解いてください。
- 答え合わせをしてください。
- 翌日、実施しなかった方の模試を上記の要領で実施してください。
- これを2ループ実施してください。
Part | 配分時間 |
5 | 10分 |
6 | 10分 |
7 | 55分 |
これで、時間配分の感覚が養われたと思います。
リスニング
リスニングのパートの勉強は以下のように進めていきます。構文を意識する必要はありません。
- まず、本書内に2セットある模試のうちから1つを選択します。
- 1日目、Part1の絵を見ながら注意深く音声を聞きます。答えを当てます。
- 解説を読みます。
- 日本語訳を確認します。
- すべての選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 2日目、Part2の設問と選択肢の音声を注意深く聞きます。答えを当てます。
- 解説を読みます。
- 設問とすべての選択肢の日本語訳を確認します。
- 設問とすべての選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 3~5日目、Part3の会話、設問、選択肢の音声を注意深く聞きます。答えを当てます。
- 解説を読みます。
- 会話、設問、すべての選択肢の日本語訳を確認します。
- 会話、設問、すべての選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 6~7日目、Part4の会話、設問、選択肢の音声を注意深く聞きます。答えを当てます。
- 解説を読みます。
- 会話、設問、すべての選択肢の日本語訳を確認します。
- 会話、設問、すべての選択肢の英文を3回音読します。このとき、スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読してください。
- 実施しなかった方の模試セットに含まれるPart1~4を上記の要領で指定の日数で実施してください。
- これを2ループ実施してください。
スラッシュリーディング的に日本語を頭にぼんやり思い浮かべて音読することで、リスニングも上達していることに気が付くと思います。リスニングの参考書は不要です。
リスニングの模試
次に、リスニングの模試をしてみましょう。制限時間を守って実施してください。1日に1セットを実施し、翌日にもう片方のセットを実施します。
解く上で重要なことは、設問と選択肢にあらかじめ目を通しておき、何が問われているのかを分かったうえで会話を聞かなければ正しい解答ができないということです。仮に日本語でのテストだとして、会話を聞いた後に、設問に目を通すと、たとえ日本語だとしても直前に流れた会話の内容の一部を忘れてしまい、解答できないのと同じことです。
ではどこで設問と選択肢に目を通すかですが、各Partの初めで必ずそのPartの説明がありますので、その時に目を通すこと、それから、解答はできるだけ会話の音声が流れている間に記入し、会話が終わったら次の設問とその選択肢の読解を進めるようにします。選択肢まで届かないときは少なくても設問の読解はしてください。スラッシュリーディングを取り入れた音読で速く読めるようになった効果はここで発揮されます。
このようにして進めていくと、解答用紙への記入のタイミング、リズムがわかってきます。
総仕上げ
総仕上げとして、ここまでのステップをあと1ループ実施してください。かなり体に刷り込まれて、問題もある程度暗記して条件反射で答えが出るようになっているのではないでしょうか。
最後に
意味がわかる英文(意味が分かるようになった英文)を繰り返し音読することで定着率が飛躍的に高まったと思います。ですので、いろいろな書籍に手を出すのではなく、同じ書籍をとことんやりぬいてください。
当方は最終で630点が取れたので受験は完了していますが、このまま続ければ少なくても730点に届く自信があります。背伸びして800点までなら届きそうです。
<運営者情報>
toeic45.web.fc2.com管理人プロフィール
1973年生まれの会社員。
TOEICの上達方法の研究に明け暮れた日々を過ごしました。その中でも、スラッシュリーディングを取り入れたTOEIC勉強法の反響が非常に大きく、毎日1000人以上の方が閲覧しています。